白黒学派

Monochrome School

今週のAERA「男子校はオタクの揺りかご」

はたして揺りかごなのでしょうか……。疑問点はいくつかあります。記事で紹介される中高一貫男子校出身者のひとりめは現在38歳で、当時に戦争もののシミュレーションゲームダンジョンズ&ドラゴンズ(R)、いわゆるD&D(R)にはまっていたといいます。このD&D(R)は当時、株式会社新和によってベーシックルールセットが1985年に発売されているから、早生まれでないかぎり、高校3年生でD&D(R)にはまっていたことになります。玩具店にいりびたったり、店に集う他校生とゲームサークルを作るぐらいは、僕の中学、高校だけでも各組ごとに一割ぐらい保持していたんじゃなかろうか。確かにそれらのゲームにはまるのはテレビゲームにはまるのとは一線を越えていると思うので、オタクとして認知されていてもおかしくはありません。ただ、この男子校出身者がその後、大学を経て就職してもゲームをやりつづけていたのかどうか、その辺の明確な記述がないと説得力にかけると思います。そもそも21年前の事例を持ち出すなら、確認してちゃんと明記するべきでしょう。どうやら結婚するまでの10年間は趣味としていたようですが、そうであるならばなおさら男子校によるものとみなすのは短絡的じゃないでしょうか。ちなみに一番最後の奥さんの台詞は、記事的な演出があるとはいえひどいと思います。

ふたりめは現在23歳の中高一貫男子校出身者。となると多感な高校生は約6年前、1999年あたり。具体例は、教室でパソコンゲームをプレイすることに続けて、体育館で「単なる」カードゲームをしていたこと。時期的にはおそらくマジック:ザ・ギャザリングと思われるが、この体育館の事例をあたかも陰湿な出来事のように書いているのが気になります。場所が体育館のひな壇裏だったというだけですのに。別に賭けごとだったわけではなく、ただ他人の目が気にならないところで遊んでいたというのにこのあつかいはちょっとひどいし、小見出しをつけるほど特別視されるオタク的な事例ではないと思います。

つぎは、アニメオタクの恋愛事情。これはまあ平均的な事例かと思いますが、男子校限定のこととは思えません。

続いて宮城県の公立全校共学化の記事で、宮城県知事の最後の言葉。男子校の校風や教育に憧れて、入学したいという女子のため、男子校を共学化するという理由は矛盾していないだろうか。共学化することで、憧れていたはずの男子校の校風や教育は、確実に変化するはずなのに、その疑念など微塵も感じずに、「見事に切り返された」なんて書いてあってびっくりしてしまいました。

ここで記事全体のだいたい半分ですが、そこからはオタク的事例には触れず、一般的に知られる男子校の長所短所を最新事情を交えて説明していく内容。また中高一貫の男子校と、高校のみ男子校の差異について語られることはない。少なくとも現在現在25歳から30歳までなら、ここにあがる程度のオタクなら普通にいるでしょうし、要因のひとつにはなれどそれが「恋愛が不得手であること」に直結するとも思えないのです。ここで最初の疑問に戻りましょう。はたして男子校はオタクの揺りかごなのでしょうか。

あと記事と連動したアンケートで、男子校卒が語る「男子校・男子校卒のよさ」に、ひとつおかしいと思う返答があがっている。この文脈であげるべき事柄かと思いましたが、如何。