白黒学派

Monochrome School

「東西ミステリーベスト100」アンケート回答

週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100 2013年 1/4号 [雑誌]

週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100 2013年 1/4号 [雑誌]

 さて、先日「週刊文春臨時増刊」として刊行された「東西ミステリーベスト100」のアンケート回答を公開することにしました。ぎりぎりに投票したため、コメントが一部テンパりぎみなので、苦笑しつつお読みいただければと思います。海外版は、素直に1位から10位ですが、僕のなかではほとんど同率一位です。

 で、問題は国内版。

 国内版は個人的に、順位にある法則を取り入れています。それは新作順ということです。こちらも僕の内心では、実質同率一位であることに変わりはありません。ちなみに、いろいろ検討するなかで、『コズミック』を入れるために『ドグラ・マグラ』を落とすことになるとは僕も思いませんでした。



■ 国内版 ■

第1位 『天帝のはしたなき果実』古野まほろ

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

 本書がゼロ年代ミステリの最高峰であり、これから乗り越えられるべき作品であることを僕は確信しています。



第2位 『コズミック』清涼院流水

コズミック (講談社ノベルス)

コズミック (講談社ノベルス)

 この作品が新本格パンドラの匣にほかならず、その後、新本格は本格を目指すがゆえに本格ならざる道を歩むことになったのです。



第3位 『密閉教室』法月綸太郎

密閉教室 (講談社文庫)

密閉教室 (講談社文庫)

 青春ミステリとセカイ系の萌芽はここにありました。



第4位 『天狼星』栗本薫

天狼星 (講談社文庫)

天狼星 (講談社文庫)

 名探偵と怪人との知的格闘を描いた古き良き探偵小説がここにあります。



第5位 『占星術殺人事件島田荘司
 推理小説の新たな原点として、いつまでも読まれるべき一冊。

占星術殺人事件 (講談社文庫)

占星術殺人事件 (講談社文庫)



第6位 『サマー・アポカリプス』笠井潔

サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

 高度に発達した推理は哲学と見分けがつかない、そのことを鮮烈に示した一作。



第7位 『戻り川心中』連城三紀彦

戻り川心中 (講談社文庫)

戻り川心中 (講談社文庫)

 人の思いは命よりも重い。その逆説がこの作品の美しさにほかなりません。


第8位 『匣の中の失楽竹本健治

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

 四大奇書のひとつとして、本書が永遠に語り継がれることを望みます。



第9位 『虚無への供物』中井英夫

虚無への供物 (講談社文庫)

虚無への供物 (講談社文庫)

 閉じたはずの黒天鷲絨のカーテンは、何度も何度も何度もまた開かれることでしょう。



第10位 『獄門島横溝正史

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

 暗闇のなかの光。それが日本の推理小説の最高峰であることは疑うべくもありません。



■ 海外版 ■

第1位 『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 この作品ほどトリックだけが一人歩きしているものもないだろうに、その奇抜な発想と美しいプロットのために今なお読み継がれている作品。



第2位 「モルグ街の殺人」エドガー・アラン・ポー

モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集? ミステリ編 (新潮文庫)

モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集? ミステリ編 (新潮文庫)

 密室殺人や意外な犯人もそうであるが、なによりも「名探偵の推理」という美しい趣向を見いだしたことに本作の意義がある。



第3位 『シャーロック・ホームズの冒険コナン・ドイル

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

 ポーの生み出した「名探偵の推理」を科学的発想によって肉付けすることにより、今日にまで至る推理小説の可能性を切り開いたといっていいだろう。



第4位 『ギリシャ棺の秘密』エラリイ・クイーン

ギリシャ棺の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-30)

ギリシャ棺の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-30)

 厳密な「名探偵の推理」に潜む隘路を残酷に描くことで、逆説的にその推理の輝きを描ききった名作。



第5位 『アクロイド殺しアガサ・クリスティ

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 読者を推理に促すことがトリックに繋がるという離れ業を生み出すとともに、あくまでも小説内でその離れ業を終わらせる技法に驚嘆するほかない。



第6位 『ブラウン神父の童心』チェスタトン

ブラウン神父の童心 (創元推理文庫)

ブラウン神父の童心 (創元推理文庫)

 この短篇集ほどプロットとトリックの美しい逆説を描いたものは二度と現れないであろう。



第7位 『シンデレラの罠』セバスチアン・ジャプリゾ

シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

 今も多く書き継がれるメタミステリの原点というべき名作。



第8位 『皇帝のかぎ煙草入れ』J・D・カー

 『三つの棺』も『火刑法廷』も好きではあるのですが、総合的なランキングだとこの作品を選んでしまうところに自分の傾向を見てしまいます。



第9位 『黄色い部屋の謎』ガストン・ルルー

黄色い部屋の謎 (1965年) (創元推理文庫)

黄色い部屋の謎 (1965年) (創元推理文庫)

 美しい密室の謎はここから始まりました。



第10位 『星を継ぐもの』J・P・ホーガン

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 本作品がいわゆる「新本格」的発想の源泉のひとつであることは間違いありません。