白黒学派

Monochrome School

電波的な彼女

学園ミステリとしてはぎりぎり及第点といったところですが、やはり犯人当てをするほどの仕組みではなく、そこはもうひとひねりほしかったところですけれども、ラノベじゃこのぐらいでいいかもと思わなくもないですが、その判断がすでにラノベラノベ以外の優劣関係を前提としているもので、それを盲目的に信じているわけなどなく、あくまでもいくつかの価値観ものさしのひとつでしかないわけで、そういういくつかのものさしをちゃんと提示して理論的に云いたいかななんて思っているものの、誰か適任の人が現れないかなあなとも思っていたりします。


また、学園ものとしてならば及第点を軽々と越えた良作と自信を持っていえますし、念のため書いておきますが、その優れた書きぶりが推理小説としては不利な状況を生みだしているわけで、返す返すも残念で仕方ないですが、それはともかく、教室の一匹狼である主人公と、彼を追い回す妄想力全開少女、主人公につっかかる真面目な委員長(当然、女性。なぜ当然なのかは説明しない)、不良の主人公でも親しく接するクラスメイトなど、ありがちな人物配置ではあるが、ちゃんと各登場人物に山場を用意していて、ほらそこで告白するか、さりげなく好意を示しているのに当然気がつかないよね、などと読者を牽引していくちからはちゃんと評価してあげたい。


あと、主人公がしばしば吐露する人生観と、作品の最後で明らかになる犯行動機とはやはり西尾維新に通ずるものを感じてしまったわけで、それは西尾維新に倣っているという意味ではなく、たぶん学園ものを書くとき、物語的に通過しなくてはならない何かがあるからだと思うのです。


最後に、もう奈落的で絶望的で虚無的な名前をつけるのは禁止にしていただきたいと思っていて、その理由はもはやそういう名付けがはやっていて新鮮味にかけるのもありますが、なんといっても純粋にもったいないのではと感じていて、そういう名前は書いている作品の位置付けも考えて判断したほうがいいのではと愚考することしばしばでして、その意味では海野藻屑という名前はちゃんと作品の立ち位置を考えている秀逸な名付けだと思います。